忘れた頃に、訪れるシリーズ。カナダ滞在記。
昔、ウルルン滞在記って番組がありましたね。面白かったなあ。知ってます?知ってますよね?え、知らない?
カナダ滞在記。ぽつりぽつりと、遅すぎる備忘録。
カナダ物語①はこちら。⇒私の人生に大きな影響を与えたカナダのとあるファームに到着した日の話
ファームでは、だいたい8時から3時まで何かしらお手伝いをした。お昼に1時間休憩があって、午前と午後には15分程度のおやつ休憩。
毎朝の仕事は決まっていて、飼っている動物たちの世話。
ニワトリ、アヒルにエサ(野菜くず)をやり、飲み水を取り替える。みんながエサに夢中になっている隙に、卵を回収。どんなに冷えた朝でも、卵はほんのり温かい。
ニワトリは、大体いつも産む位置が決まっていて、たまに卵を温めてる親鳥をどかして取り上げる時は、胸が痛むよりも前に身体が痛む。ものすごい勢いで手や足をつついてくるし、それが結構痛いのだ。
ニワトリの卵をとるときは、厚い手袋と長靴をはくこと。無敵である。
一方でアヒルは、割りとそこらへんにポロポロ産む。人気産卵スポットもあるにはあるが、彼らは「あ、出た」くらいの感覚で産んでるのではなかろうか。何度も踏み潰しそうになった。
アヒルの卵をとるときは、卵を踏み潰さないように気を付けること。
ニワトリもアヒルも、そもそもそーゆー特徴があるのかは不明だ。たまたまそこのニワトリ達が気性が荒く、アヒルたちはおおざっぱだったのかもしれないとも思う。
私がいた頃は、ニワトリとアヒルの卵を人工的に孵化させる時期で、毎日様子を見ているうちに、卵が動きだし、ヒビが入り、中からヒナが出てきた時は、静かに、かなり感動した。
ヒナが生まれてからは毎日の癒しだった。ヒナたちは専用のゲージ(といっても芝生の上に囲いと屋根をつけただけ)で育てた。エサはオーガニックの粉末のものだった。
それでも、30匹くらい孵化したうちの、7.8羽くらいはそのゲージを出る前に死んでしまった。身体が弱かったのもいるだろうし、気温の変化についていけなかったのかもしれない。
そして、えさを与えてもいつも輪の中から追い出され食べさせてもらえなかったり、なぜかみんなに突かれたりしてるうちに弱っていった子もいた。
鳥たちの世話が一通り終わると、今度は別の野菜くずとパンくず、水に溶かした粉末のオーガニックのえさを運んで豚の世話。
2匹いたが、彼らはえさを持った私の姿を見つけるなり、毎日飽きずに全速力で向かってくる。
はじめの頃はまだ小さくて可愛かったけれど、大きくなるにつれて、迫力もパワーもましてくるので、恐怖すら感じていた。
彼らの目的はもちろん私ではなく、あくまで食べ物なので、食べ物が入ったバケツを鼻で下からガンガン突いてくる。中身が私にかかろうが、ちっとも気にしない。
でも、それがまた素直な子どものようで可愛かった。
それが終わると、今度は馬小屋へ。
馬小屋、といっても小屋は小さくて、おそらく小屋の50倍ほどの草原があって、そこには腰の曲がった年寄り馬と、2頭のロバがいた。
彼らのえさは、残り野菜の中でも、葉物がほとんどで、なかでもセロリが好物だった。冬場は別の小屋から干草をちぎって、一輪車で運んだ。
その馬は捨て馬(馬を捨てるって何!?)で、決して愛想は良くなかったが、警戒もせず、穏やかで優しい馬だった。
ロバはどちらも臆病で、最初こそ警戒していたものの、だんだん慣れてくると、小屋の掃除をしている時にそーっと寄ってきたりしてとても可愛かった。
これらが一通り終わるのに大体1時間。それが終わると、飼い犬2頭と林に散歩に出かける。
敷地内にある大きな森のような林が、私はとてもとても大好きで、なんとも思わなくなるくらいあちこちにリスが走り回っていた、綺麗なメープルの林だった。
真夏の鳥小屋はなんともいえぬ匂いと湿度でクラッとしたし、真冬の水やりは凍るほど冷たかった。
鶏には突つかれ、豚にはどつかれ、怪力の犬にはひきずられたこともあったけど(笑)、小さい頃から動物が大好きだったので、毎日こんなにたくさんの動物と接することが出来たのはとても楽しかった。
特にやることがない日は、馬やロバを見ながら草原でゴロゴロしたり。
ホームシックになることはなかったけれど、毎日毎日英語で話すことに疲れたときは、ひよこを眺めて癒された。笑
それでも、馬とロバはペットみたいなものだけど、ニワトリ、アヒル、豚はペットではない。
《食べ物》として育てていたのだ。
それは最初から知っていた。私は、だからこそ、そこで暮らすことを決めたのだから。
つづく。
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