雪と温泉とわたしと。

いよいよ本格的に雪が降り、一面にのっこりと積もり始めた。

雪国に生まれ育てば、雪なんて珍しくもロマンティックでもなく、ただ生活に障害をきたす、やっかいな存在でしかない。

「どれくらい積もるかな」にワクワクした弾む気持ちは1ミリも無く、「何回雪かきしなきゃいけないだろう」「明日はどれくらい早起きしたら仕事に間に合うだろう」という憂鬱な気持ちがたっぷりとこもっている。

とはいえ、慣れたもんで、降ってしまうものは仕方ないのだから、せっせと雪かきをするしかない。

きっと台風が多い地域は、台風のことをこんな風にとらえているのかしらなんて思ってみる。

本当なら出たくない。けど、今日はどうしてもゆっくりと大きなお風呂に身を投げ出したい。

だから、午前中から山のほうにある温泉に出かけた。

日曜日の午前中、しかも吹雪の中わざわざやってくる人は限られる。

それでも女湯にはざっとみても10人以上の老若女。

着いた時には吹雪いていたのに、浴場に出ると正面のガラスからはまぶしいくらいの太陽光が差し込んでいた。

体を流して、熱めのお湯にじゅわんと入って、喉の奥で自分にだけ聞こえるくらいの大きさで、うう~っと唸る。たまらん。

それから内側がポカポカしてくるのを感じるくらいまで、ぼぉぉおっと浸かり、浴槽に腰掛けるおばあさま3人組の、内容は聞き取れないくらいのボリュームの雑談に耳を預ける。

それからは、サウナに入ったり、お湯に戻ったり、寝湯で放心してみたり。
とにかく自由にのんびりと、広くて明るいお風呂を楽しむ。

何度目かのサウナ後、水風呂を上がって、近くにあった椅子に腰かけ、大浴場をなんとなく眺めていた。

壁一面のガラス越しに太陽の光が差し込んで、お湯がその光を受けてゆらゆら揺れるたびにあちこちでキラキラと光る。

そのなかにぽつりぽつりと、逆光で表情のわからない人影が見える。

黒い髪や茶色い髪、白い髪の隙間から光が漏れて、それはまた水面の反射とはまた異なるキラキラだ。

きれいだなあ。

とにかくその光景がきれいできれいで、ずっと眺めていたけれど、温泉やサウナで十分に温まっていた体にはなんてことない。

温泉から上がり、また服を重ねて、外に出る。

相変わらず外は雪が降っていて、ピリッとするほど冷たい風が吹いているのに、芯から温まった体は強い。

雪国の、寒い寒い日に、あっついお風呂に入ってから外に出た瞬間。これは、結構好きだ。

「無敵だ。」と思える。結局すぐに寒くて車に駆け込むのだけど。

ああ、また雪は降るし、溶けては凍るのか。相変わらず、厳しいなあ。

でもまあ、今年も付き合うよ。それしかないんだから。ああ、まだ降ってるよ。

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