私は、綺麗な『落日』を集めて生きている。

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ふだんほとんどテレビをみないのだけど、友人のツイートを見て、久しぶりにリアルタイムでFNS歌謡祭を観た。

東京事変が、「落日」、を歌うから。

私が東京事変で一番好きな曲。

厳密に言えば一番なんて決められるものではないんだけど、一番と断言したくなるくらいには思いが高まる曲。

 

私がこの曲を知ったのは、東京事変を聴いていたからじゃない。

大学生の頃、住んでいた町のブックオフで見かけた小説。

Lily著『空とシュウ』。

もともとLilyさんの著書は読んでいたけれど、その本に惹かれたのは別の理由だった。

 

1つは、裸の女性がうつぶせで横たわっているような、なんともいえない表紙の雰囲気に惹かれた。

そして、当時私が大好きだった人の名前がタイトルになっていたから。

 

それでも、古本屋でなにげなくその本を見かけた時、一瞬で買う運命にあるんだとわかった。

迷うこともなく手に取り、読んだ。

 

そしてその小説の中に出てきたのが、東京事変の『落日』。

知らなかったから、調べてみたらYouTubeにあがっていた。

聴いたら、「ああ、そうか、ぴったりだ。このシーンには、この曲なんだ。」と思った。

 

それから、ふと思い出しては『落日』を聴く。

 

切ないような、諦めのような、どこか儚さのある曲なのに、どうしてかいつも、この曲を聴いた後は、「頑張ろう」という気持ちになる。

 

私が思い焦がれたタイトルの彼とはやがて結ばれ、そして離れた。

いまは違う人と結ばれ、揺れながら続いている私の人生は着実に進んでいる。

 

それでも、この曲を聴くと、思い焦がれたあの頃を、足元も定まらずにどこか浮かんでいたような頃を、漠然とした将来の不安にゆらゆらと脅かされていた頃を、静かに、淡々と、それでも今日が最後のように全力で赤々と燃える落日を、思い出す。

 

燃えるような太陽は、やがて空をオレンジ色に染め、その姿を消す頃、空は赤と青が溶けた明るい紫色に染まる。

次第に青みは深さを増して、いっそう深く、濃紺へ変わっていく。

東京事変の『落日』を、テレビで観られるなんて。

 

ささいなことだけれど、生きていればこんなささいないいことがある。嬉しいことがある。

 

積み重ねだ。小さなしあわせを集め歩いていく。

 

生きることを諦めたあの人にも、伝わればいいのに。

 

 

 

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